三重県津高校から新たなキャリア授業を。「ConnecTSU」が生み出す“つながり”と恩のサイクル

様々な働き方が認められるようになった現代、僕たちのキャリア選択はこれまでより多様化してきている。個人によって顔や性格が違うように、キャリアの選び方も千差万別。一般企業に入ること、フリーランスとして働くこと、複数の仕事をすること、場所や時間に縛られず働くこと、その全てが個人の自由だ。

そんな時代の中で、若者たちは一体どのような基準でこれから先のキャリアを考えていけば良いのだろうか?そして、学校ではどのようなキャリア教育を行って、新しい時代に備えれば良いのだろうか? 

今回紹介する奥田博貴(おくだひろき)さんは、母校である三重県立津高校でキャリア教育の授業を展開している熱意溢れる活動家だ。 奥田さんは、普段は若手ビジネスマンとして仕事をこなす傍で「ConnecTSU(コネクツ)」という団体で母校に向けたキャリア教育プログラムを開催している。「キャリア教育」と聞くと、学校側が主体となって行うものだという印象を受ける。なぜ奥田さんは外部の団体として津高校でキャリア教育を行うのか、まずはその原体験に迫った。

「つながり」の中で見つけた自分の中の“価値観”

奥田さんは、学生時代の就職活動では当然のように給料の高い大企業ばかりを見ていたという。しかし、そのうち「自分の人生は本当にこれで良いのか…」とモヤモヤとした気持ちを抱えるようになっていった。そんな時、大学のラグビー部OBの方と話す機会があった。その先輩は大手の商社に長年勤めたエリートビジネスマン。一見人生の成功者のように思えたが、改めてこれまでのキャリアを振り返ると「いったい自分は誰のために働いていたのか?」という疑問を感じるのだと語った。その時聞いたOBの方の言葉がその後もずっと心の中に残っていた。自分はこれから何のために働き、何のために生きるのか。就職活動が進んでいく中で「本当にこれで良いのか」と、自問自答を繰り返していた。そうしているうちに、「自分は、大企業のネームバリューや給料を重要視しているわけじゃない」ということに気付くことができた。自分が大切にしたいのは、「誰の人生でもない自分の人生として、自分が本当にしたいことを生涯通して行いたい」ということ、そして、「自分がお世話になった人に恩返ししたい」ということだった。

この経験から、奥田さんは後輩たちにも自分の中にある価値観を理解したうえでキャリア選択をして欲しいと考えた。また、奥田さんはOBの方の話を聞いて自分自身の気持ちに素直に向き合えた理由について、同じ学校や部活に所属していたという「つながり」があるからこそ、OBの方の話を自分ごととして捉えることができたのだ、と考えた。そこで、奥田さんは当時の自分と同じような機会を後輩たちにも提供したいと考え、母校である津高校でのキャリア教育授業の開催を決意した。 

「ConnecTSU」が目指す新たなキャリア教育

奥田さんは自身の経験から、津高校の後輩には先輩とキャリアについて対話する機会が必要だと考えた。そこで、より多くの先輩からキャリアについての話を聞くことができるように、津高校の卒業生も巻き込んで授業を作っていった。実際のプログラムでは360人の生徒に対して、50人ものOBを集めてそれぞれのキャリアについて話し合ってもらった。かつて同じ学校で学んだ先輩たちの言葉だからこそ、生徒たちはそれを自分ごととして捉えることができ、自分自身の価値観を深く見つめ直すことができた。このプログラムには50名ものOBがボランティアで集まってくれた。忙しい中時間を割いて後輩のために足を運んでくれた多くのOBたちを見て、それだけ母校という「つながり」は強力だと、奥田さんは実感したという。

また、現在は「ConnecTSUネットワーク」という新しい取り組みも行なっている。これは、生徒たちが今後のキャリアについて悩んだ時に相談する先輩を気軽に探せるOB名簿だ。名簿にはOBたちの進路や高校時代の情報がまとめてあるので、それを元にOBを探すことができる。相談したいOBを見つけたら記載されているQRコードを読み込み、質問をすることができる。個人情報を扱っているということもあり、教室などのクローズな場にしかOBOGのリストを置かないなど、ConnecTSUのコンプライアンスへの意識は非常に高い。母校の後輩のために協力したいという純粋な想いで奥田さんのもとにたくさんのOBが集まっている。母校という「つながり」があるからこそ人が集まり、先輩後輩という「つながり」があるからこそ生徒たちは自分の中にある価値観に素直に向き合える。「ConnecTSU」はその「つながり」を生かして津市から社会を良くしていこうと活動している団体だ。 

三重県津市から、社会はどのように変わっていくか?

新たな切り口のキャリア教育を展開している「ConnecTSU」だが、ゆくゆくは全国にこの活動を広めていく予定だ。そのための第一歩として、まずは津高校から津市へとキャリア教育を展開しようとしている。母校からキャリア教育に改革を起こし、「津市には教育で改革を起こした津高校がある」と言われるようにしたいと考えている。そして、津高校でのキャリア教育によって自分の価値観に向き合うことができた生徒たちが、いずれ誰かのため、社会のために活躍するようになってくれたら嬉しい。

津高校で授業を受けてきた生徒たちがそれぞれの分野で社会を良くしていく。奥田さんにとってそれはラグビー部のOBの方が自分のキャリアに向き合う機会をくれたことへの恩返しでもあり、自分を育ててくれた母校への恩返しでもある。次の世代では、社会に羽ばたいた生徒たちが、次の後輩たちのキャリアに一緒に向き合うことで恩返しをしていく。奥田さんは、このサイクルを「恩のトレード」と表現した。


奥田さんは真っ直ぐに、過去の自分が変われたきっかけを母校の後輩たちに提供しようとしている。それはまさに先輩からもらった「恩」を今度は後輩たちや母校に返しているように見える。

奥田さん自身もこの「恩のトレード」の中にいて、そのサイクルの起点になっているのだと私たちは感じた。「ConnecTSU」の最大の価値は「つながり」を作ることだ。

先輩と後輩をつないで新しいキャリア教育を生み出す、母校とOBをつないで新しい協力関係を作る、そうして出来たつながりの中で「恩のトレード」が生まれる。世代を超えてつながりを生み出し、その中で恩をトレードさせることが「ConnecTSU」の魅力だと私たちは考えている。

キャリアの選択肢が多様化した今、「ConnecTSU」の目指す“自分の中にある、自分なりの本当の価値観を理解する”ということが最も重要になってくるのではないだろうか。

「ConnecTSU」の活動はこれからも津市に限らず様々な地域に広がっていく予定だ。その活動と成長は「ConnecTSU」のFacebookページで確認できる。また記事内で紹介した「ConnecTSU Network」についてもチェックしてみてほしい。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

WordPress.com Blog.

ページ先頭へ ↑

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。